縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

私たちの町の世界に一つだけの音楽会

とらふすクラシック・263
私たちの町の
 世界に一つだけの音楽会
     ヴァイオリニスト 北島佳奈
時の総理、安倍晋三首相が全国すべての学校に臨時休校をするよう要請したのは、二0二0 年二月の二十七日のことです。ちょうど私は、秩父宮記念市民会館( 埼玉) で、「夢・紡ぐ・音」と題した演奏会を、秩父の「木」のぬくもりが感じられる空間の中で行っていました。

「木のぬくもり」で思い出すのは、私のデビュー十周年を記念して演奏させていただいたルルホールでの演奏会です。紀州杉に囲まれた中で私のヴァイオリンが響いていた.....そんな感慨に浸ったのもほんの一瞬。私の日常にコロナ禍が侵入してきたのです。全国各地の子供たちの夢を私の演奏で、もっと輝かせたいという試みはもちろんのこと、世の中に演奏会というものがなくなり、医療に携わる方々の力の大きさを感じる傍ら、演奏者としての道を歩んでいる私ができることは何なのだろうか。そのことばかりが頭をよぎりました。

悶々とする私の目の前に、やる気満々の門下生の子供たちがいました。コロナ禍の中、自分たちだけの会ではありましたが、堂々としかも楽しそうに音を奏でる子供たちの姿。ヴァイオリンを手に、しっかりと育ってくれた子供たちでした。聴いていた私たち大人がどれほどの元気をもらったことか。今こそ、この子供たちとの時間を豊穣なものにしたいと願う私がいます。

和歌山では四年ぶりとなりますが、来る八月四日木曜日、県立図書館メディア・アート・ホールで「私たちの町の世界に一つだけの音楽会」を開催いたします。今だからこそ、軽やかな動きが感じられ、色とりどりの華やかさのある音たちが飛びかう「フォーレのヴァイオリンソナタ」を聴いていただきたい思いが沸き上がっているのです。

時は過ぎゆきます。目の前の子どもたちも大人になってゆきます。今、共にいる奇跡のような時間の中で紡いできた子供たちの音を、ぜひ聴いていただきたい。どちらも熱い思いでいっぱいですが、真夏の清涼ともなりますように。問合せは同ホール(073-436-9530)まで。

ヴァイオリニスト 北島佳奈
和歌山市生まれ、4歳からヴァイオリンを始め、京都市立芸術大学、大学院在学中、ドイツに留学。帰国後、各地で活動を重ね、和歌山青年会議所アゼリア賞、大桑文化奨励賞、和歌山市文化奨励賞受賞。