縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

千田和美と池原衣美のデュオリサイタル

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・135。
 千田和美と池原衣美のデュオリサイタル
        ピアニスト 千田和美
昨年の12月、この和歌山で私千田和美と池原衣美は久しぶりにデュオリサイタルをさせていただいた。お互いに故郷を離れての生活が長かったが、生まれ育ったこの地でリサイタルをさせていただくことはとても有り難く、幸せな思いでいっぱいであった。迎えて下さる客席の皆様の空気もとても温かく、安心して舞台に立つことが出来た。

もうすぐ令和元年の12月。まさに時代の移り変わった今年の師走に、また皆様と共に音楽に包まれたいと思う。今回は前半に、それぞれのソロ、また様々なジャンルのプログラムをご用意。ヴァイオリンのソロは、ヴィタリーの「シャコンヌ」ピアノソロはショパンの「ノクタ
ーン27―2」や「幻想即興曲」。そして二人でミュージカル「ポギー&ベス」より「サマータイム」なども演奏させていただく。有名で耳馴染みもある作品、またクラシックとは違う古き良きアメリカの空気も楽しんでいただけるのではないかと思う。

そして後半はどっぷりクラシック。ルクレールのシンプルで美しいソナタと、ブラームスソナタ第3番を演奏させていただく。ブラームスは昨年第1番を演奏し、大阪でのコンサートで第2番、そしてとうとう今回は最終作の第3番となる。3番は、1番2番よりもかなり重厚感のある曲と言われており、深みや渋味が濃い素晴らしい作品だ。ある意味大人の曲であろう。

今回のコンサートは、前半と後半とでかなり違うタイプの作品をプログラミングしたが、それは、皆様に同じクラシックでも様々なスタイルの音楽があることを知っていただき、その様々な作品のスタイルや背景によって「弾き方」や「音色」までも違うのだということを知っていただき、そして感じていただきたい思いから。12月1日(日)15時より、和歌山県立図書館メディア・アート・ホールで3000円。ぜひ、お運びいただき、様々なリズム、そして音色を体験していただきたい。問合せ:同ホール(073-436-9530)

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千田和美
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業。インディアナ大学音楽学部大学院パフォーマー・ディプロマコース修了。全日本ピアノ指導者協会正会員。きのくに音楽祭2020実行委員。

ミニピアノ ~河合小市による独創的な単弦楽器

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・134。
 ミニピアノ ~河合小市による独創的な単弦楽器
            ピアニスト 砂原悟
2017年の春に、ふと思い立って山陰を旅したときのこと。松崎という鳥取の小さな駅にあるゲストハウスにその楽器はあった。カフェの片隅にあったその物体は小さくて、初めはピアノだとは思わなかった。しかし蓋を開けてみると鍵盤がある。鍵盤数を数えてみると40。何だこれは。クラヴィコードだってもっと鍵盤数が多い。ふつふつと興味が湧く。幸い客が私ひとりだったので、店の人に許可をもらって音を出してみた。音が鳴らない鍵盤や、鳴っても弦が切れていて変な打楽器のような音のする鍵盤が多い。だが中には普通に鳴る音があって、その音が妙に柔らかく、いい感じの音なのだ。いつしかプリペアド・ピアノ風の即興演奏に興じていた。

京都に戻ってから、その楽器の存在が気になってしかたがないので検索してみた。はじめはトイピアノしかヒットしなかったが、しつこく検索していると、名古屋の調律師が同型のピアノを修復しているのを見つけた。カワイ楽器の創始者、河合小市が作ったオリジナル楽器らしい。電話してみると、まだ楽器があるとのことで、早速見に行く。松崎で聴いたあの音だ。ただ松崎の楽器より一回り大きい51鍵の楽器。それでも縦横約90センチの可愛いサイズである。今回使用するのはこの楽器で、資料によると終戦直後の1948年(昭和23年)製らしい。普通3本張られている弦が、1本しかない。同じく単弦のリュートやハープに少し似た感じの音。ピアノを単弦でというのは、楽器作りを一から考え直させられる発想ではないか。アクションも河合小市の独創的なもので、調律師に言わせると天才的な工夫があるそうだ。

この楽器の音色が生き、かつ音域がカバーできる楽曲はそう多くはないが、それを探すのも楽しい。いろいろ試した結果、スウェーリンクから現代まで4部構成の面白いプログラムができた。珍しいミニピアノの音を、ぜひ一度ご体験あれ。

プロフィール 砂原悟
東京藝術大学大学院、ミュンヘン音楽大学修了。ポルト市国際ピアノコンクール入賞。クロイツァー賞受賞。京都市立芸術大学教授。東京藝術大学非常勤講師。

ワインとクラシックを図書館で・・・

とらふすクラシック・133。
 ワインとクラシックを図書館で・・・

来週、11月の第三週の木曜日は、フランスのボジョレー・ヌーヴォーの解禁日として知られています。「ワインは五感で味わうもの。味覚だけじゃなく。五感すべてを使う、感覚のダイナミズムがワイン極上の楽しみ」といわれ、クラシック音楽とワインは、とても相性が良いのが知られています。王侯貴族のサロンを紐解くまでもなく、大阪のシンフォニーホールなどで、コンサートの幕間のホワイエで、ワインを楽しむ賑わいを眺めるにつけ、羨ましくさえ感じる音楽ファンは少なくないはずです。

県立図書館の音楽監督を務める、東京藝術大学学長でヴァイオリニストの澤和樹さんが、ドイツ正統派の室内楽団、ヘンシェル弦楽四重奏団と共に、県立図書館2Fのメディア・アート・ホールにやって来ます。そして、このコンサート、Mah!ライブラリー室内楽定期演奏会、29回目にして、初めて会場でのワインが解禁となりました。開演前と休憩に合わせて、ホワイエで赤白のワインが、ワンコインで提供されます。「さすが、音楽監督!」と乾杯をあげたくなります。

プログラムは、ベートーヴェンモーツァルトです。来年に、生誕250年を迎えるベートーヴェンからは、初期の名曲として知られる、弦楽四重奏曲 ヘ長調 Op.18-1。第2楽章のアダージョは「ロメオとジュリエット」をイメージされて書れた曲と知られ、全体には明るい曲風を保ちながらも、緊縮し充実した曲に仕上げられています。モーツァルトは、 弦楽五重奏曲 ハ長調 K.515。ヘンシェル弦楽四重奏団に、澤さんがヴィオラで加わります。この曲は、モーツァルト全盛期の作品で、交響曲「ジュピター」に並ぶ風格を持つとされ、ヴァイオリンとチェロとの掛け合いが多く楽しめます。

この演奏会は、11月20日(水)19時から、チケットは、前売3000円 当日4000円。問合せは、和歌山県立図書館(073-436-9530)まで。WEB予約は、http://musicmart-ticket.com/

民族楽器 ディジュリドゥが初登場!

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・132。
 民族楽器 ディジュリドゥが初登場!

38回目を迎えるLURU CLASSIC CAFEに、初めて民族楽器 ディジュリドゥが登場します。奏者のKinyaさんも「ま~ある意味ディジュリドゥもクラシックな楽器」とし、次のように書き添えています。「オーストラリアの先住民アボリジニが、祭儀に演奏する楽器であり、白蟻に食われて自然に空洞化されたユーカリの木で作られています。吹口より息を吹き込むことにより、音が共鳴しあい神秘的な倍音が作り出されます。」

Kinyaさんは、和歌山県出身。'93年に九州天草にてディジュリドゥと出会い。その後、ディジュリドゥのセッションや情報交換を目的としたKANSAI BLOW-OUT をオーガナイズ。ディジュリドゥの紹介やイベントの開催などを精力的におこない、日本のディジュリドゥシーンの黎明期を支えてきました。現在は無国籍音楽団Eurasian Rungのメンバーとして全国各地でLIVE活動を重ねています。「世界最古の管楽器」のともいわれるディジュリドゥの時空を超えた響きをお楽しみください。

この日の幕開けは、クラシックギターの金谷幸三さん。神戸生まれで、今は和歌山在住。パリ国際音楽大学に学び、全国で演奏活動を続けています。バリオスの「過ぎ去りしトレモロ」、ラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」など、ギターの佳曲を奏でてくれます。

続いては、朗読の福山ひでみさん。和歌山市生まれ、大阪芸術大学放送学科卒業後、ラジオやテレビで活躍。その後、ナレーションや「声」のスペシャリストとして活動を続けています。この日は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」を聞かせてくれます。

最後を締めくくるのは、ピアノの瀧本裕子さん。和歌山市生まれ、桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業後、ドイツに留学。帰国後は、ソロ、室内楽など幅広く活動中。シューマンの「献呈」、シューベルト即興曲集から2曲、そしてベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」第2楽章で幕を降ろします。

お寺でクラシック 御霊屋コンサート

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・131。
 お寺でクラシック 御霊屋コンサート
      ソプラノ歌手 瑞樹比美香
小鳥たちのさえずりと虫の声、荘厳な香りに包まれて、御霊屋(おたまや)コンサートは今年で第六回目を迎えます。このコンサートは、平安時代から続く「長保寺十夜会」に合わせて行っている奉納演奏で、約一時間、日常生活を忘れてクラシックなひと時を過ごしていただきたい想いから始まりました。

コンサートの会場である長保寺は、海南市下津町にある紀州徳川家菩提寺で、その歴史は古く長保二年(一〇〇〇)に一条天皇の勅願によって創建されました。本堂、多宝塔、大門が国宝に指定され、紀州徳川家歴代の廟所は約一万坪、大名墓所としては全国一の規模です。御霊屋の正式名称は「徳川家御霊殿」(和歌山県指定文化財)で、紀州徳川家歴代藩主と正室、側室、子息のお位牌をお祀りしています。

2017年には、この紀州徳川家十六代当主徳川頼貞が生涯をかけた、日本初の音楽専門図書館「南葵音楽文庫」の蔵書が和歌山県に寄託され、世界的に貴重な史料の数々が、県立図書館の閲覧室にて誰でも手に触れて見ることが出来るようになりました。

今回のコンサートのプログラムは、頼貞兄弟の音楽教師であり、「青い目の人形」「十五夜お月さん」等で有名な作曲家、本居長世の童謡「いねむり地蔵」と歌曲「白月」、そして、この季節にぴったりな小林秀雄作曲「落葉松」。フランス海軍士官であったジャン・クラースの歌曲で、詩はインド人でノーベル文学賞を受賞したタゴールという「歌の捧げもの」より第三番と第四番。そして、頼貞とも交流のあったプッチーニのオペラ・アリアなど全15曲です。外国語曲は原語で歌いますが、一曲ずつとてもわかりやすい解説がつきます。また、会場の皆さんと一緒に歌う童謡の時間もございます。

この御霊屋コンサートは、11月3日です。長保寺十夜会法要15時~、コンサート16時~、入場無料、年齢制限はありません。御霊屋の一般公開も一年でこの日限りなので、ぜひ皆様お越しください。
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瑞樹 比美香 たまき ひみか
海南市下津町在住。指揮者セルジョ・ソッシィ氏に師事し日本音楽高等学校卒業後、ウィーン音楽院で学ぶ。大正大学在学中ミュンヘン大学へ留学。来月東京サントリーホール(小)でTIAA全日本クラシックコンサートに出演予定。

スーパーキッズ・オーケストラの精鋭

とらふすクラシック・130。
 スーパーキッズ・オーケストラの精鋭

スーパーキッズ・オーケストラ(SKO)は、2003年より始まった音楽が大好きな小学生から高校生までの弦楽器によるオーケストラ。芸術監督は、兵庫県立芸術文化センターの芸術監督で、世界で活躍する指揮者・佐渡裕さんが務めています。全国からのジュニア演奏家をオーディションし、合同練習や公演を通じて行う活動は、キラキラ輝くオーケストラとして知られています。そのSKOのメンバーとして、世界最長寿のクラシックTV番組「題名のない音楽会」にも出演した、若きヴァイオリニスト・Syugaさんが和歌山にやってきます。

Syugaさんは、1997年東大阪市生まれ。現在は東京藝術大学4回生です。おもちゃのヴァイオリンで遊んでいた事がきっかけで、ヴァイオリンを始め、07 年にはSKOで「題名のない音楽会」に数回出演。09 年いずみホールにてソリストデビュー。日本クラシック音楽コンクール全国大会第2位(1位なし)受賞、14 年SKO初の男性コンサートマスターに就任。16年東京藝術大学入学。その後、椎名林檎など多数のアーティストへのレコーディングや、ミュージカルなど多様な活動を続けています。

07 年、当時高校生だったピアニストのRioと小学生だっSyugaが結成したユニットがRio&Syuga。クラシックを基本にしている二人が、ポップス、JAZZ などのエッセンスを織り交ぜ、幅広いジャンルにチャレンジし、ライブハウスやイベントで、アグレッシブなピアノと自由奔放、独自のスタイルのヴァイオリンで、聴衆の心を一気に鷲掴みにしています。

リベルタンゴ」「情熱大陸」など超絶技巧曲から、「糸」などJPOP、「枯葉」などジャジーナンバーまで楽しめるRio&Syugaのフレッシュ!ライブは、11月2日(土)18時から、狐島のLURU HALL。料金は3000円(ドリンク付)問合せは、同ホール(073-457-1022)まで。

第一回「きのくに音楽祭」を終えて

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・129。
 第一回「きのくに音楽祭」を終えて
   きのくに音楽祭実行委員長 髙橋巧二
「和歌山にはなぜ音楽祭がないのか」との思いから、和歌山県立図書館メディア・アート・ホールに集う音楽家や音楽愛好家が集まり実行委員会を立ち上げたのが2年前。ようやくこの10月3日から6日までの4日間、同ホールをメイン会場に、和歌山市内で大小16のステージで、様々なジャンルの音楽を楽しんで頂ける和歌山で初の本格的な音楽祭「きのくに音楽祭2019」を、好天にも恵まれて開催する事ができました。

ところで音楽祭の良さとは何でしょうか。私は「ステージと客席の距離を縮める」ことではないかと思います。普段お客様にとって演奏家はとても遠い存在に感じていませんか?特にクラシックや邦楽などでは。でも決してそんなことはないのです。演奏家の練習秘話や失敗談は面白いですし、曲の時代背景などを教えてもらいながら聴くと、さらに演奏家や音楽を身近に感じ、今までとは違う角度からコンサートを楽しめます。

きのくに音楽祭では、客席から自然にスタンディングオベーションや手拍子が沸き起こり、終演後にはロビーでお客様と演奏家との交流がされる等、今までになくステージと客席の一体感を感じさせる演奏会となりました。さらに、今回は多くの和歌山県出身の演奏家の方々にご出演頂き、お客様も和歌山県出身演奏家の多さに驚き、また演奏家同士も同郷の演奏家として新しい交流が生まれる等、お客様も演奏家も「和歌山の音楽文化の奥行きの広さ」を再発見する事が出来ました。これも音楽祭の持つ大きな力の一つです。

最後に、音楽祭開催に当たり苦労したのはやはり資金集めでした。特に第一回目でまだ実績の無い団体でしたから。にもかかわらず14社もの企業様が快くご協賛して頂きました。また、多くの演奏家の方にご協力とご出演をして頂き、多くのボランティアの方がスタッフとし
て舞台裏の運営を支えて頂きました。紙面をお借りしまして心より厚く御礼申し上げます。有難うございました。
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プロフィール 髙橋巧二
和歌山大学在学中に和大交響楽団和歌山市交響楽団に在籍。現在、和歌山市交響楽団理事、関西トランペット協会会員、アマチュアトランペット奏者、第一回きのくに音楽祭実行委員長