縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

曽根麻矢子、チェンバロによるJ.S.バッハ、ゴルトベルク変奏曲

とらふすクラシック・128。
 曽根麻矢子チェンバロによる
  J.S.バッハ、ゴルトベルク変奏曲

4日間に渡り繰り広げられた、きのくに音楽祭が6日に閉幕しました。和洋楽器から児童合唱団まで、出演者が一堂に会して、大合奏するラプソディ・イン・ブルー」(作曲:ガーシュウィン、編曲:山路敦司)のフィナーレは、未来を暗示し感動的でした。

その余韻も冷めやらぬ、今週の土曜日に、音楽祭のファイナルステージにも登場した古楽器チェンバロの希少な演奏会が和歌山で行われます。チェンバロは、バロック音楽等で広く使用されたピアノの原型となる鍵盤楽器で、ピアノの興隆と共に姿を消していきました。しかし近年、その音色の素晴らしさと共に音楽のオリジンを求める動きから復興され、複製楽器の製作や古楽の演奏会で用いられる機会が増えています。

今回の演奏会は、この5日に東京サントリーホールのブルーローズ(380席)で行われた、曽根麻矢子さんの「J.S.バッハ、ゴルトベルク変奏曲」全曲演奏を、和歌山市狐島の響きに定評のあるLURUHALL(33席)で、再現するものです。1741年に出版された「ゴルトベルク変奏曲」は、不眠症に悩む伯爵のために演奏された逸話が知られますが、演奏には高度な技術が必要です。

曽根さんは、実力、人気ともに日本を代表するチェンバロ奏者。1991年に、フランスの名門レーベル・エラートから、初の日本人演奏家としてCDデビュー。以降14枚のソロCDをリリースされています。そのCDでも評価の高い曽根さんの「ゴルトベルク変奏曲」ですが、休憩をはさみ1時間30分にわたる全曲演奏は、コンサートでの披露は数年ぶり、さらに響きが満喫できる小さなホールでの演奏は、ならではの至福の空間を創りだすことになるでしょう。使用楽器は、名古屋の安達正浩クラヴサン工房から持ち込まれます。

この演奏会は、10月12日(土)14時から、問合せはLURU HALL( 073-457-1022)、アフター・ティーパーティ付の8000円です。

いよいよ開幕、きのくに音楽祭 「雨上がりの朝に」で

とらふすクラシック・127。
いよいよ開幕、きのくに音楽祭
      「雨上がりの朝に」で

いよいよ今日から、和歌山で初めてのクラシック音楽祭・きのくに音楽祭2019が始まります。宵宮、初日、中日、千秋楽と4日間、和歌山県立図書館メディア・アート・ホールを中心に開催されます。また、音楽を届ける「動く音楽祭」も目指していますので、買い物先など、思わぬところで素敵な音楽に出会えるかもしれません。フリー・イベントも用意されていますので、HP(http://kinokuni-fes.com/)をご覧になり、一人でも多く、きのくに音楽祭を楽しんでいただければと思います。

明日の初日、4日9時より、和歌山市伊太祁曽神社の木の神様の御前にて、これから始まるきのくに音楽祭を、お守りいただくように、奉納演奏が行われます。音楽祭の総監督・澤 和樹さんのヴァイオリンと同じくチーフプロデューサーの 西 陽子さんの筝によるもので、今回の音楽祭を象徴する「洋と和」の楽器による演奏となります。まず、澤さんは、バッハの無伴奏作品から一曲を撰んで演奏されます。続いて、西さん、八橋検校作曲「六段」、そしてお二人で、きのくに音楽祭のテーマ曲「雨上がりの朝に」(山路敦司作曲)を合奏されます。木立に包まれた中に響くヴァイオリンと箏の音色を奉納されるわけです。この奉納演奏は、どなたでも無料でご覧になることができます。

続いて、4日12時より、和歌山城天守閣前広場で、きのくに音楽祭オープニングライブ(観覧無料)が開かれます。「洋と和」の美しきミューズ・寺下真理子さん(ヴァイオリン)と辻本好美さん(尺八)のデュオを上野山英里さん(キーボード)がサポート。ソロ、デュオ、トリオと多様な編成で、きのくに音楽祭のテーマ曲「雨上がりの朝に」や葉加瀬太郎作曲「情熱大陸」など華やかに奏でられ、開幕を告げるファンファーレとなって城下に響きわたります。

10月6日のファイナルコンサートの「お祭り騒ぎ」まで、きのくに音楽祭をどうぞお楽しみください。

あなたの生活や人生を 音楽というアートで豊かにしたい。

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・126。

あなたの生活や人生を
音楽というアートで豊かにしたい。
和歌山で初めてのクラシック音楽祭・きのくに音楽祭2019が、いよいよ来週開幕されます。宵宮、初日、中日、千秋楽と4日間にわたり、17の音楽イベントが行われます。和歌山県立図書館メディア・アート・ホールや和歌の浦アート・キューブのコンサートは、すでにソールドアウトのものもありますが、まだまだ間にあうコンサートや、誰もが参加できる無料イベントが6つも用意されていますので、HP(http://kinokuni-fes.com/)をチェックし、少しでも多くの方に、きのくに音楽祭を楽しんでいただきたいと思います。「あなたの生活や人生を音楽というアートで豊かにしたい。」これが、きのくに音楽祭がめざすものだからです。

きのくに音楽祭のTOP切って、宵宮の3日(金)18時から、和歌山の玄関口、JR和歌山駅近鉄百貨店和歌山店前で、観覧無料の宵祭ミニライブが行われます。このミニライヴには、和歌山が世界に誇る「和歌山児童合唱団」の50人子供たちが、清らかでエネルギーあふれる歌声で、これから始まる3日間のきのくに音楽祭を予告し、お客様をお迎えします。この音楽祭のために、山路敦司さんが作曲された「きのくに音楽祭のテーマ」の世界初演をはじめ、踊りたくなる楽しい歌や、心が癒やされる歌、元気が湧く歌、和歌山のわらべ歌を素材にした、信長貴富さん作曲「夕焼け小焼け」などが披露されます。

「きのくに音楽祭のテーマ」を作曲された山路敦司さんは、和歌山市出身。東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。作曲家・武満徹の映画音楽とポピュラー音楽に関する研究で京都市立芸術大学にて博士号を取得。現代音楽やコンピュータ音楽の作曲家として世界的に活動、映画音楽やCM音楽、またゲームやポピュラーの音楽に至るまで幅広い作品を手掛けています。「きのくに音楽祭のテーマ」は音楽祭では、いろなん編成や編曲で演奏されますので、聴き比べもまた楽しくなります。

きのくに発掘コンサート〜南葵音楽文庫に光を当てて

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・125。
 きのくに発掘コンサート〜南葵音楽文庫に光を当てて
とらふすクラッシックという本コラムは、紀州徳川家ゆかりの音楽資料、南葵音楽文庫が、和歌山に里帰りし、和歌山県立図書館で、公開されたことから始まっています。そして、同じ頃立ち上がった、和歌山で初めてのクラシック音楽祭、きのくに音楽祭とのコラボレーションが、非常に楽しみでした。

10月のきのくに音楽祭では、メイン会場での四つのコンサートのトップを切って、コラボレーションの演奏会「きのくに発掘コンサート〜南葵音楽文庫に光を当てて〜」が行われます。紀州徳川家第16代当主徳川頼貞公が、英国ケンブリッジ大学での音楽留学を経て、莫大な私財を投じて収集した南葵音楽文庫。その中に、頼貞公と親交の深かった名チェリスト、ジョゼフ・ホルマンのコレクションが、数多く残されています。

「楽譜は音として再現してこそ文化遺産」と、チェリストが作曲した楽曲を、発掘して、世に出していくのが、ライフワークと語るチェロの林 裕さんが、県立図書館に通い、膨大なホルマン・コレクションから、掘り起こした楽曲を演奏します。世界初演かもしれない演奏会には、とてもワクワクします。紀州の殿様が遺した楽譜が、和歌山でよみがえるのですから。驚いたことに、海がお好きな林さんは、中紀の海岸沿いにもお住まいで、時々和歌山県人になられるという・・なんというご縁でしょう!

林さんは、東京藝術大学卒。日本音楽コンクール第一位、黒柳賞を受賞。奨学生として、フライブルク音楽大学院を首席修了。青山音楽賞、文化庁芸術祭優秀賞など数多くの受賞を経て、多様な活動を重ねています。また、アルバムはレコード芸術の特選を獲得しています。

この演奏会は、発掘曲に加えて、カザルスの「鳥の歌」やサンサンース「白鳥」などチェロの名曲たちも楽しめます。10月4日(金)13時30分から、和歌山県立図書館メディア・アート・ホール、入場料は1500円。問合せは同ホールまで(073−436−9530)

3人のソプラノとジョイントコンサート

とらふすクラシック・124。
 3人のソプラノとジョイントコンサート
毎月第3土曜日に開催されるLURUCLASSICCAFE。9月の定例会は、3人のソプラノ歌手とクラシックギター、ピアノの4組の皆さんとなります。

1組目は、一年ぶりの出演となるクラシックギターの小谷允城さんソロ・ステージです。あまりにも有名な「アランブラ宮殿の想い出」を作曲したスペインの作曲家で、ギター奏者・F.タレガ:の曲を3曲まとめて演奏します。「アラブ風奇想曲」「ラグリマ」などです。ギターのデ
リケートな響きをお楽しみください。

2組目は、碇 理早さん率いる【劇団;Sotto i Pini】。成川奈緒さんと熊谷真寿美さんの二人のソプラノと弾き歌いもする碇さんのピアノで、プティッ!オペラ・ガラ。チレア作曲オペラ「アドリアーナ・ルクブルール」より、「私は創造の神々の卑しいしもべです」、グノー作曲オペラ「ファウスト」より「宝石の歌」など、オペラの楽しさを満喫させてくれそうです。

3組目は、初出演のピアノの井関はるかさん。井関さんは、オール・ショパンのプログロムです。曲目は、ワルツ第6番、第7番、第9番「告別」、そして「アンダンテスピアナートと 華麗なる大ポロネーズ」です。スタインウエイをしっかり鳴らしてくれることでしょう。

4組目は、ソプラノの矢倉愛さん。主宰する「THE OPERA WAKAYAMA」で、昨年末にプッチーニの「ラ・ボエーム」出演、8月30日から9月19日までブルガリア・ヴァルナのヴァルナ国立歌劇場で、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」に出演、オーデイションも受けて直前に帰国、この演奏会に駆けつけます。「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」や「トスカ」の「歌に生き、恋に生き」など、森下美和さんのピアノ伴奏で歌います。

この演奏会は、9月21日(土)13時30分から。チケットは1500円(アフターティーパーティ付)限定50席。 問合せはLURU HALL(073-457-1022)まで

ロマンティック・ピアノの調べ

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・123。
 ロマンティック・ピアノの調べ
10月4日(金)から開催される、きのくに音楽祭2019。この和歌山初のクラシック音楽祭を盛り上げようと始まった”きのくに音楽祭プレコンサート、フォルテピアノ広場クラシックス”も、いよいよ最終回を迎えます。

4月から毎月、和歌山市本町のフォルテワジマ4Fのピアノ広場で行なわれてきたものです。音楽の都・ウィーン製のピアノ、ベーゼンドルファーを奏でながら、お気軽にクラシックに親しんでいただこうと、きのくに音楽祭実行委員でピア二ストの千田和美さんの企画で、工夫
をこらして進めてきました。ぶらくり丁のお買い物ついでに、寄っていただければと予約も要らない観覧無料のミニ・コンサートですが、お一人様1000円以上の寄付をお願し、きのくに音楽祭に全額寄付されています。

今回、9月14日(土)14時からの最終章の出演は、ピアノの上野絵理子さん。”ロマンティック・ピアノの調べ”です。上野さんは、京都市立芸術大学卒業、同大学大学院修士課程修了。大学院在学中に渡仏、ジュヌヴィリエ国立音楽院室内楽科において一等賞でディプロマ取得。帰国後、数多くの音楽活動を重ね、この6月には和歌山市交響楽団とラベルのピアノ協奏曲を競演されたばかりです。プログラムは、ショパンの「ノクターン第20番 嬰ハ短調 <遺作>」や「 バラード第4番」、ドビュッシー「月の光」、ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」など、親しみやすく楽しめる1時間です。

間近にせまってきた、きのくに音楽祭2019。7つのコンサートの前売りチケットは、和歌山県民文化会館和歌山市民会館楽天チケットなどで販売されています。売切れコンサートも出てきていますので、お早めにお求めください。また、14日のフォルテピアノ広場には、実行委員より、最新のお知らせをご案内するコーナーも設けられています。上野さんのピアノ演奏を楽しみながら、きのくに音楽祭への思いを膨らませください。

ワルター・アウアー氏を迎えて

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・122。
 ワルター・アウアー氏を迎えて
         ピアニスト 村田千佳
フルーティスト、ワルター・アウアーさんのファンは多い。飾らない性格、さり気ない気遣いで人を惹きつける。以前、ヴァイオリニストのライナー・ホーネックさんが、あるアウアーさんの熱烈なファンの方が「ホーネックさんも素晴らしいけれどやっぱりアウアーさんが素敵」と言っていたと聞かされて、「フルーティスト? ヴァイオリニストが一番格好いいに決まってる」と皆を笑わせていたが、そんなアウアーさんのウィーンでのフルート盗難事件は記憶に新しい。その楽器は素晴らしく温かみのあるなめらかな響きを持っていた。材質は24金。例えばある程度以上のクラスの弦楽器の場合、万が一盗難にあったとしても、闇取引でもされない限り、市場に出た瞬間に足がつく。しかしフルートという楽器は材質は金・銀・プラチナなど、言ってしまえば非常に精巧に作られた(怒られるかもしれないけれど貴金属製品なのである。溶かされてしまったら製造番号も製作者のサインも跡形なく消えてしまう。結局その楽器は出てこなかった。今頃は誰かの指に輝いているのだろうか。願わくば美しい人の指にはまっていてほしいものだ。

さて今回のプログラム、メインはシューベルト。ピアノ独奏作品をアペリティフに、名曲「しぼめる花による変奏曲」を置いた。シューベルトの自作歌曲による変奏曲といえば、ヴァイオリンとピアノのための幻想曲(D934)では、歌曲「挨拶を送ろう」が使われている。シューベルト作品の中で「幻想曲」と「しぼめる花」は、技術的な難しさと音楽の美しさという点でおそらく双璧をなすだろう。美しくドラマティックな歌曲の世界を楽しんでいただけたらと思う。他には、オーストリア生まれのアウアーさんたっての希望でモーツァルトソナタ、そして充分にフルートの魅力が聴ける、フォーレベーム、エネスクを並べている。初めての来和となるアウアーさん、携えてくるのはもちろん三響24金の美しいフルートだ.。

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村田千佳 ピアニスト
和歌山市生まれ。東京藝大学附属高校、同大学同大学院修了後、ウィーン国立音楽演劇大学大学院修了。大桑文化奨励賞、和歌山市文化奨励賞、和歌山県文化奨励賞受賞。