縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

ヘンシェル・クァルテット with 澤和樹&蓼沼恵美子

わかやま新報 
とらふすクラシック・370。

ヘンシェル・クァルテット with 澤和樹&蓼沼恵美子
           前• 東京藝術大学長 澤 和樹

ヘンシェル•カルテットは、今年結成30周年を迎えたドイツを代表する弦楽四重奏団です。もともとは、ヴァイオリンのクリストフとマルクスの双子の兄弟、そして彼らのお姉さんのモニカ•ヘンシェルヴィオラを担当、その三姉弟チェリストが加わる形で、1990年頃から活動を始めていました。彼らの父親は、シュトゥットガルト歌劇場管弦楽団の首席ヴィオラ、母親はピアニストという家庭で、家には伝説的指揮者のセルジュ•チェリビダッケや、20世紀最高のアンサンブルとも言われるアマデウス弦楽四重奏団のメンバーがしばしば遊びに来るような環境で、ファミリーで弦楽四重奏に取り組むのは自然な成り行きでした。1991年夏に、結成したばかりの澤クヮルテットが、ロンドンでの講習会(アマデウス•コース)に参加した時に、まだ20代だったヘンシェル•カルテットと出会いました。参加者の中でも一番若い彼らは、演奏でも輝いていましたが、モニカさんは、往年の映画スター、イングリッド•バーグマンを彷彿とさせるような美貌でもあり、翌年、日本で開催する事になったアマデウス•コースに下心100%(?)で誘い、彼らの初来日が実現しました。

以来、毎年のように来日して澤クヮルテットやピアノの蓼沼恵美子との共演も日本やドイツで数えきれないほどです。‘94年に、現在のチェリスト、マティアスが定着し、’96年には大阪国際室内楽コンクールで見事優勝。彼らにとっても日本とのご縁はとても大切なものです。

今年6月末から7月にかけて、結成30周年記念コンサートツアーに私と蓼沼を招待してくれ、ドイツとデンマークで思い出深い共演を重ねました。実は、7月29日に私の母、澤美意子が、96歳で生涯を閉じました。母はヘンシェルたちが来日の度に、全国各地を追っかけするほどのファンでした。演奏家としてはもちろん、礼儀正しく純真なドイツの若者たちに心底惚れ込んでいました。和歌山城ホールでの演奏会は彼らの申し出で、亡き母に捧げるコンサートにさせて頂きたいと思います。多くの皆さまにも、現代最高の室内楽をお楽しみいただければ幸いです。

プロフィール 澤 和樹
1955年和歌山市生まれ。東京藝術大学卒業、同大修士課程修了。安宅賞受賞。ロンドン留学を経て帰国、各地で演奏活動を重ね、県文化賞受賞。前•東京藝術大学長。和歌山県立図書館音楽監督