縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

続・白鳥の歌~華麗なる饗宴2023~

とらふすクラシック・318。
続・白鳥の歌~華麗なる饗宴2023~
           ピア二スト 天羽博和

『華麗なる饗宴』は2013年にスタートした演奏会シリーズ。リサイタルとは違い、馴染みのある小品を中心にしたプログラムをお聞かせしたいと思い、「アンニュイな休日の午後を音楽とカフェでもてなすコンサート」として、最初に企画したのがドビュッシーのピアノ独奏曲全曲演奏。西日本では初の快挙となったらしく、我ながら果敢な挑戦だったと思う。

続いて2019年からは「週末の夜にお送りするお洒落な大人のコンサート」としてロマン派音楽を紹介し、一転して重厚な音楽が中心となり、前回はベートーヴェンブラームスの「白鳥の歌」と呼ばれる晩年の作品を取り上げた。晩年といっても、50代、60代で書かれたものであり、人生100年時代に生きる我々からすると全くピンと来ない。

ロマン派最終回となる今回は、シューベルト31歳で書かれた、遺作ソナタを取り上げる。演奏におおよそ40分かかる。演奏に60分ほどを要する「ザ・グレート」と呼ばれる交響曲は28歳頃に書かれている。ベートーヴェンは、同規模の作品では「ハンマークラヴィーア」を47歳、第9交響曲を54歳で発表したことを考えると、シューベルトベートーヴェンを凌ぐ早熟ぶりで、相当な速さで筆を進める才能があったとみられる。ちなみに、二人はほぼ同時代にウィーンで活躍したにもかかわらずお互いに面識はなく、シューベルトに至ってはほぼ無名のアマチュア作曲家という位置づけであった。

今回演奏する作品は2か月後に亡くなるとは思えないほど明朗快活な楽想を持つ一方、2楽章では死期を悟ったかのように陰鬱な雰囲気が終始漂っている。これから更に活躍して名声を得ようという時にどんな思いで最期を迎えたのだろうか。

最後になるが、今回で『華麗なる饗宴』はお陰様で10周年を迎える。久しぶりに第1回の共演者でもあるオペラ歌手の槇野綾さんをお迎えし、ドイツ、フランス名歌曲集で彩を添えて頂こうと思う。

プロフィール
大阪府生まれ。和歌山在住。相愛大学音楽学部卒業。京都フランス音楽アカデミー、フランス・クールシュヴェール等でも研鑽を積む。2018年、日本人7人目となるドビュッシーピアノ独奏作品全曲演奏を完結。20年、第2回日本室内楽ピアノコンクールに入賞。23年、岡原慎也指揮テレマン室内オーケストラとベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を共演