縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

華麗なる饗宴Vol.9〜回光返照〜に寄せて

今日付け、わかやま新報”とらふすクラシック・61”
 華麗なる饗宴Vol.9〜回光返照〜に寄せて
           ピアニスト 天羽博和

 ”華麗なる饗宴”として、2012年から、ドビュッシーのピアノ独奏作品全曲演奏を行っている。第1回の「2つのアラベスク」に始まり、完奏は没後100年にあたる2018年末を目標にしており、いよいよ大詰めとなってきた。今回の第9回目は、彼のピアノ音楽の集大成となる「12の練習曲」第2集を取り上げる。

 「シューマンの左かショパンの右に位置するだろう」と語るほどの自信を見せた「映像」(第1集は1905年、第2集は07年)を書いた後は、「子供の領分」、「前奏曲集第1巻」、「前奏曲集第2巻」を発表するのだが、14年には第1次世界大戦が勃発したために疎開し、また同時期に大腸がんを発病するなどして、筆が思うように進まなくなる。

 しかしその後、「攻撃された美を少しでも再建するために〜」と、1915年から亡くなる前年の17 年までに「白と黒で」、「12の練習曲」、「さまざまな楽器のための6つのソナタ」(完成したのは3曲のみ)等を渾身の力を振り絞って完成させた。いずれも晩年とは思えない密度の濃い内容を備えている。

 「12の練習曲」に関して言えば、フランス・デュラン社からショパン作品の校訂を依頼された折、ショパンが遠い故郷ポーランドに思いを馳せながら「マズルカ」や「ポロネーズ」を作曲したのと同様に、ドビュッシーは第1次世界大戦の中、ドイツから攻撃を受けるフランスに対しての愛国心から彼は創作意欲を回復させ、疎開先でわずか2カ月で書き上げたのだ。作品にわざわざ「フランスの音楽家 クロード・ドビュッシー」と署名したのは、そういったいきさつがあるからである。

 また、今回、ヴァイオリンに中前晴美さんを迎えて演奏する「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」はドビュッシー自身によって初演されたが、それが最後の公開演奏となってしまった。彼が晩年に何を想い何を伝えようとしたのか。テーマである「回光返照」にヒントがある。

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プロフィール 天羽博和 ピアニスト
大阪府生まれ。和歌山在住。相愛大学音楽学部卒業。京都フランス音楽アカデミー、フランス・クールシュヴェール等でも研鑽を積む。ドビュッシー没後100年の2018年に向けて、ピアノ独奏作品全曲演奏が進行中。

 

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