縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

大人のロマンティックコンサート

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・120。

 大人のロマンティックコンサート
           ピアニスト 天羽博和
ドビュッシーピアノ独奏曲全曲演奏シリーズ「華麗なる饗宴」がひとまず終わり、新たに「週末の夜にお送りするお洒落な大人のコンサート」としてロマン派音楽を全5回で紹介していこうと思う。

初回はロベルト・シューマンヨハネス・ブラームス。このドイツロマン派を代表する2人を語る上で、今年生誕200年を迎えるクララ・ヴィークの存在を忘れてはいけない。彼女は夫ロベルトの創作活動に、長きに亘って影響を及ぼした。ふたりはクララの父の猛反対を押し
切って結婚し、8人の子宝に恵まれ、良妻賢母の鑑のように言われている。ところが、耳を疑うような噂が・・

シューマン夫妻の末っ子はヨハネスとクララの子供ではないか、というものだ。ロベルトが晩年、精神疾患により療養所で面会謝絶の生活を送っていた頃に産まれた子に、ヨハネスは亡きメンデルスゾーンの名前にちなんで「フェリックス」と名付けた。病弱だったフェリックスが亡くなった翌年に作曲されたブラームスの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番」は、天国の子供に聴かせたいとクララが願い、またヨハネスはその報酬全額をシューマン基金に寄付している。そういったことから、フェリックスはヨハネスとクララの子供であるという噂が払拭できないでいるのである。

今回の演奏会で演奏する「クライスレリアーナ」はシューマン20代後半の作品で、E.T.A.ホフマンの書いた音楽評論集の中に登場するクライスラーという人物を、自分自身、さらに恋人クララの姿にも重ね合わせたピアノの大曲。そして同じく演奏する「ヴィオラとピアノのためのソナタ第1番」はブラームス最晩年の作品で、クララも初演に立ち会っている。彼の孤高の心境と諦観の境地を示しており、枯淡の味わいをもっている。

今回は、大阪交響楽団ヴィオラ首席奏者・早田 類 さんをお招きし、クララとロベルト、クララとヨハネス、二人の天才の生涯を象徴するプログラムとしてお届けしたいと思う。

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プロフィール
大阪府生まれ。和歌山在住。相愛大学音楽学部卒業。京都フランス音楽アカデミー、フランス・クールシュヴェール等でも研鑽を積む。2018年、日本人7人目となるドビュッシーピアノ独奏作品全曲演奏を完結させた。