縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

「あの人もいた、、展」に寄せて

わかやま新報
とらふすクラシック・343
「あの人もいた、、展」に寄せて
       南葵音楽文庫サポーター 神谷さやか
現在チラシ写真のような展示会が和歌山県立図書館1階展示室で行われています。私の父の遺品の展示です。展示会の正式なタイトルは「あの人もいた プログラムでたどる1950年代音楽シーン IN 和歌山」です。

昭和28年(1953)3月の和歌山労音第5回例会井口基成ピアノリサイタルから始まり、最後は昭和34年(1959)2月の例会までのプログラム全63点をガラスケース内に展示しています。その中でも特に当時の日本音楽界のそうそうたる音楽家たち、クラシック音楽のお好きな方々ならどなたもご存知の「あの人」が登場した会のプログラム14点を選んで表紙と曲目紹介のページをコピーしてパネル展示しています。

父は職場の同僚に誘われて労音の例会に通うようになり「それまで田舎者で歌謡曲しか聞いていなかったものがクラシック音楽に目覚めた」と生前よく語っていましたが、その演奏会のプログラムを残していたとは知りませんでした。父の死後、実家の整理をしていて発見してびっくりしました。父の遺したものが皆様に見ていただけることになり大変光栄です。南葵事業のひろがりとして開催を後押しいただいた県立図書館関係者の方々とここまでご指導ご尽力いただいた「南葵音楽文庫」の研究員の先生方、サポーターの方々に厚くお礼申し上げます。

63点のプログラムを整理していて2冊ある会があるのに気づきました。昭和30年(1955)5月、6月、7月の会です。前年に結婚した母といっしょに行ったのではないでしょうか?そしてもうひとつ昭和31年(1956)の8月、9月の例会のプログラムはありません。それまでほとんど毎月欠かさず通っていたのになぜ??私の誕生日は昭和31年9月です。さすがの父も出産を間近に控えた母をおいて出かけられなかったのか、、と思うとおかしいやらありがたいやら。父母の思い出と私のクラシック好きの原点のプログラムです。

この展示は3月6日まで開催中です。無料でご覧になれますので、是非ともお越しください。
プロフィール:神谷(かみや)さやか
和歌山市出身、高校卒業後大学進学で上京、都内で仕事を続けた。現在神奈川県在住。実家の整理でたびたび帰省「和歌山愛」が募りUターン移住検討中。

パッヘルベルのカノン

とらふすクラシック・342
パッヘルベルのカノン

この2月の三連休のことです。和歌山城ホールの西川智也さんのクラリネット演奏会で、フランスの香りいっぱいの音楽を楽しんでから、近くのモンティグレにオープンしたばかりのカフェに寄り、エクレアとカフェオレで、フランスの余韻を味わっていました。

ここから、ぶらくり丁のギャラリー カフェに歩き出したところ、なぜか足取りが重く、いつものように歩けません。そこで駐車場から車を取り出し、ぶらくり丁に向かいました。

ぶらくり丁のコインパーキングから、そのお店まで、ほんのワンブロック、これが息が切れて前に進まないのです。持病の喘息めと、何度も立ち止まり、落ち着いたころやっとお店に辿り着きました。展示をみて、ドリンクを楽しみ早々に退散いたしました。

連休明けて13日、一日早く至福のチョコレートが届いてました。超ハイブランドなこのお菓子のパッケージを手がけたという和歌山のデザイナーの力量に感心しながら、口に含んでみると、それこそ心臓がとまりそうな美味しさでした。

ふと、かかりつけ医の先生に、体調を相談したくなり、午後から出かけました。レントゲンも心電図も異常なく、念の為にと進められた血液検査をお願いして失礼しました。 ところが夕方、携帯がなり「心筋梗塞の疑いがあるので・ ・」と仰天の知らせ。紹介状をいただき、日赤病院緊急外来へと向かったのでした。

あっという間に、カテーテルによる検査と施術が決リ、翌朝一番からの、局所麻酔による1時間40分は、美しい曲線のロボットアームが行き交い、モニターを垣間見ながら、ドクター達の会話もかっこいい、まるで映画の世界。詰まっていた冠動脈に、3本のステントを入れていただき、無事終了。ありがたいことに、術後も順調で、この月曜日から普段の生活に戻れました。この高度医療を支えている皆様方には感謝しかありません。そして、緊張の中、勇気つけられたのはHCU(高度治療室)。その部屋のナースコールのメロディー は、「パッフェルベルのカノン」でした。

モーツァルトオペラ「ドン・ジョバンニ」をスペクタクルに演劇化

とらふすクラシック・341

モーツァルトオペラ「ドン・ジョバンニ」を
   スペクタクルに演劇化
      劇団ZERO 代表 島田 忠

モーツァルトによる屈指の人気オペラ「ドン・ジョバンニ」を演劇化して劇団ZEROが上演いたします。劇団ZEROでは、紀の国女王伝説「名草姫」や有吉佐和子原作の「三婆」と名曲名演を使用した話題作の上演を重ねていますが、今回の作品は、昨年度の「恋人たちの学校」に続いて、モーツァルト4大オペラのひとつ「ドン・ジョバンニ」を原作に、脚色したスペクタクルな舞台に仕上げています。

この作品は、モーツァルトが17877年に作曲したオペラで、台本は「恋人たちの学校」と同じダ・ポンテの名コンビです。「ドン・ジョバンニ」はスペインの伝説のプレイボーイの物語で、ダ・ポンテは、ベルターティの「ドン・ジョバンニまたは石の客」やモリエールの「ドン・ジュアン」を参考にしたもので、ドラマチックでスピーディな展開は、観るものをハラハラドキドキさせる悲喜劇エンターテイメントです。

舞台を創作するにあたって、近年、ますます音楽の重要性は高くなっています。音楽は、場面の情景や登場人物の感情表現は時として瞬時に表現でき、舞台全体のイメージそのものを決めることになると思います。舞台の成功は、すばらしい音楽との出会いがあるかどうかにかかっているといっても過言ではないと思います。

今回の演劇化では、村娘とドン・ジョヴァンニが踊るコントルダンスはじめ、使用音楽はすべてモーツァルトの作品を使用しています。そして、公演会場の和歌山城ホールは格別に音響効果の素晴らしいホールです。珠玉の名曲が響きわたる演劇舞台を是非、皆様に体感していただきたいと思います。

劇団ZERO「ドン・ジョバンニ」は、脚本・演出・主演:島田忠、音楽監修:島田万里子。公演は3月2日(土)午後5時より。会場は、和歌山城ホール大ホール、入場料は、前売り2千円(当日は5百円増)。チケットは、同ホールなど各プレイガイドで、好評発売中です。問合せは、090-1481-0941まで。

プロフィール 島田 忠
劇団ZERO代表。1989年、劇団を結成。以来、日々、夢と感動を与える舞台創りに挑戦。大桑文化奨励賞受賞。劇団は、和歌山市文化奨励賞、和歌山県文化奨励賞受賞。

クラシックギター&ソプラノ ~インタビューリサイタルVol.1

とらふすクラシック・340

クラシックギター&ソプラノ
~インタビューリサイタルVol.1
   和歌山大学名誉教授 米山龍介

皆様、【リサイタル】という言葉を思い浮かべてください。ステージで音楽家が演奏するのを聴く会のことだと多くの人は思われるでしょうし、私もそのとおりだと思います。しかし、今回新企画で開催致しますのは、インタビューコーナーでリサイタリストに様々な角度から喋って頂き、キャラクターまでを炙り出すことが出来れば、という企画なのです。

もう少し詳しく説明致しますと、以前から私はコンサートに出掛けると、その演奏家が奏でる「音楽」を聴きに行くという意味と、その演奏家がどのような「考え」で演奏しているのか、或いはどのような生活環境の上に今日の演奏が出来上がったのか、何を食べ、どんな空気を吸ってその曲に思いを込めたのか、というようなことを想像しながら、その演奏家との≪出会い≫を楽しんで来るという≪聴き方≫になってきたような気がします。

曲を聴くだけでなく、そのようなことが感じられるようなコンサートを実践してみたいという思いから、大変デリケートな音のするクラシックギターとソプラノのデュオリサイタルを企画致しました。プログラムは、F.タレガ「アルハンブラの思い出」、M.ファリャ「7つのスペイン民謡」などです。

クラシックギターは、田辺市ご出身で現在ウィーン国立音楽大学で勉強中の平岡奏さん、ソプラノは、演奏活動の中でスペイン歌曲もレパートリーとする娘の米山茉莉子、両者によるデュオリサイタルです。両者とも繊細な音づくりを旨としていますので、近年完成した少人数収容でこのような聴き方に相応しい音楽文化堂ホールにて開催致します。

どうぞ皆様、このコンサートにいらっしゃいませんか。お出掛けし易い昼下がりの開演でございます。お待ちしております。日時は、2月17日(土)午後2時から、イオンモール和歌山北の音楽文化堂ホール。チケットは、大人3千5百円、高校生以下1千5百円(当日はいずれも5百円増)。お問い合わせは、0736-62-8626

米山龍介プロフィール
オーボエ・指揮・音楽プロデュース。東京藝術大学及び大学院修了。安宅賞受賞。パリ、スイス、アメリカに留学。県文化奨励賞。地域文化功労者(文科大臣表彰)。和大教育学部教授、観光学部教授を経て、現在和大名誉教授。

上野絵理子ピアノリサイタル〜ピアノで紡ぐ音世界〜

わかやま新報 
とらふすクラシック・339

上野絵理子ピアノリサイタル〜ピアノで紡ぐ音世界〜
        ピアニスト 上野絵理子
2月18日、和歌山市狐島LURU HALLにて『上野絵理子ピアノリサイタル〜ピアノで紡ぐ音世界〜』を開催させていただきます。今回はショパンシューマンラヴェルスクリャービンと様々な国や時代で活躍した作曲家を取り上げます。

シューマンの「クライスレリアーナ」は、当時シューマンが傾倒していたロマン派の文学者ホフマンの小説に登場する「楽長クライスラー」からタイトルが引用されています。シューマンは恋人クララとの結婚をクララの父親に反対されるもその困難を乗り越えようと前へ突き進む意欲に駆られていた時期の作品です。

一方、ショパンの「舟歌」は彼の晩年の作品で、恋人ジョルジュ・サンドとの破局を迎え持病も悪化し死期が近づく中、自身の人生を静かに振り返るような作品となっています。
未来と過去の逆のベクトルへ意識が向かう二作品。作曲家が残した楽譜から、時空を超えて、一体どのような響きの世界を創り上げられるのか私自身も楽しみです。

時空というとロシアの作曲家スクリャービンが思い浮かびます。今回演奏するスクリャービンの「幻想曲」では、まるで無重力空間にいるような浮遊感とスクリャービン特有の神秘的な響きによってさらに別次元へと誘い込まれるような音楽を味わっていただけたらと思います。

そのスクリャービンと同時代を生きたフランスの作曲家ラヴェルは、現代の私たちにもどこか懐かしいと思わせてくれる懐古趣味を持った作曲家です。ラヴェルの現す懐古的なものはどこか物悲しくもあります。でもその正体が分からない、小さなガラスの中に入った遠い記憶をただ見ているような感覚に、ある種スクリャービンと違った意味での不思議な感覚を味わえる作曲家かと思います。

当日は、お聴きくださる皆さまと一緒に、このような様々な作曲家が駆け抜けた人生に思いを馳せることが出来れば幸いです。今回はバイノーラルマイク録音によるライブ配信もされるそうで、オンライン上でも皆さまとお会いできることを楽しみにしております。
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上野絵理子 プロフィール
和歌山市出身。京都市立芸術大学・大学院修了。パリで研鑽を積む。国内外コンクールで多数受賞。幅広い演奏活動を展開する傍ら後進の指導にも力を注ぐ。和歌山信愛女子短大、IBU各非常勤講師

中学生と共に歌い継ぐ「花は咲く」「群青」 第48回市響・市響合唱団定期演奏会

わかやま新報
とらふすクラシック・338
中学生と共に歌い継ぐ「花は咲く」「群青」
  第48回市響・市響合唱団定期演奏会
       和歌山市交響楽団理事 髙橋巧二

今年も「第48回和歌山市交響楽団・市響合唱団定期演奏会」が開催されます。プログラムは、チャイコフスキーバレエ音楽くるみ割り人形」から第2幕、合唱曲として大変有名な高田三郎作曲合唱組曲水のいのち」、和歌山市中学校合同合唱団による「花は咲く」「群青」です。

この演奏会は、昭和51年に「オラトリオ演奏会」としてスタート。和歌山市中学校合同合唱団は、第3回演奏会に初登場して以来40年以上に渡り、「アヴェ・マリア」や「美しく青きドナウ」等を歌ってまいりました。今回歌う「花は咲く」「群青」は、第42回から毎年歌い続けて今回で5回目になります。

ご存知のとおり、この2曲は東日本大震災からの復興を願って生まれました。「花は咲く」は、NHKの復興支援プロジェクトとして、宮城県出身の音楽家2人が作詞作曲。「群青」は、大震災で大きな被害を受けた福島県南相馬市立小高中学校の3年生が、卒業を前にして、震災で亡くなった生徒や避難のため全国に散った友達への思いを、音楽教諭の小田美樹先生が書きとめて歌詞にし、曲をつけて誕生しました。どちらの曲も全国各地で今も大切に歌い継がれています。

東日本大震災から13年。阪神大震災からは29年。そして今年、年が明けた1月1日『能登半島地震』。日本全国に衝撃が走りました。「花は咲く」「群青」は、今までも演奏するたびに被災地のことに想いを巡らせますが、今年は特にその抒情的で美しい旋律と歌詞が胸に刺さります。これからも和歌山の中学生と共に、この曲をしつかりと歌い継いでゆきたいと思います。是非皆様も中学生の澄んだ歌声に心癒して頂き、被災地のことや地震津波への備えにも一緒に想いを巡らせてみませんか。

演奏会は2月11日(日)午後1時30分開演、和歌山城ホール大ホール。入場料1500円(学生500円)※未就学児無料/お子様連れ大歓迎!前売りは同ホール(073-432-1212)で取り扱い中。詳しくはQRコードをご覧ください。
プロフィール 髙橋巧二
和歌山大学在学中に和大交響楽団和歌山市交響楽団に在籍。現在、和歌山市交響楽団理事、関西トランペット協会会員、アマチュアトランペット奏者、

金子美香!メゾソプラノ・リサイタル Vol.2 ~日本の歌、世界の歌~

わかやま新報 
とらふすクラシック・337
金子美香!メゾソプラノ・リサイタル Vol.2
~日本の歌、世界の歌~
昨年の8月から、開催が延期されていた金子美香さんのメゾソプラノ・リサイタル Vol.2~日本の歌、世界の歌~が迫ってきました。

金子さんは、山口県生まれ。東京音楽大学を首席で卒業後、同大学院を経てザルツブルグモーツァルテウム音楽院マスタークラスを修了。帰国後、数多くのオペラ、コンサートで活躍を重ねます。2018年夏、ワーグナーで知られる・バイロイト音楽祭で、ドミンゴ指揮オペラ「ワルキューレ」に、日本在住歌手としては初めて、ソリストとして出演、一躍話題となります。そして同時に、日本の言葉が持つ力を信じ、日本を感じる音楽を表現したいと、日本歌曲にも本格的に取り組んでいます。

今回の演奏会の第1部は、日本の歌。畑中良輔作曲の歌曲「八木重吉による5つの歌」から始まります。八木重吉の繊細で、飾らない美しさを持つ「素朴な琴」「雨」「夕焼」などの短い詩は、メゾソプラノで歌われると、その深い味わいは何ともいえません。弘田龍太郎「叱られて」 越谷たつのすけ「初恋」橋本國彦「はな緒」なども言葉を大切に、丁寧に歌い上げます。レコード芸術特選盤を得た、彼女の日本歌曲アルバムの歌世界が楽しめます。

第2部は、世界の歌。ドニゼッティ「ロベルトデグリュー」より 「苦しむものには涙は甘い」、マルトゥッチ「追憶の歌」、ドホナーニ「なぜ泣いてるの、わたしのヴァイオリン」、 リスト「愛の夢」などオペラアリアや歌曲たちでメゾの世界を満喫させてくれます。

ピアノ伴奏は碇理早さん。和歌山県出身。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業後、渡伊。イタリア国立ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院ディプロマ修了。同音楽院アカデミーコースに進み、語学力や声楽への興味からオペラの世界に深く関わっています。

この演奏会は、2月10日(土)午後2時からLURUHALL、5千円(配信は3千円)。問合せは同ホールまで(073-457-1022)