縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

和歌山の若い芽ピアニスト20人で「チクルス」演奏会

とらふすクラシック・271
和歌山の若い芽ピアニスト20人で「チクルス」演奏会
   きのくに音楽祭実行委員 千田 和美
子どもたちのための音楽祭、今年のきのくに音楽祭の最終日には「若い芽チクルスコンサート」が開催される。「チクルス」って何?そう思われる方が多いのではないだろうか。ウィキペディアには「特定の作曲家の作品を連続して演奏する音楽会」とある。出演者全員が「一人の作曲家」の作品をリレー形式で演奏するコンサートだ。

今回の特定の作曲家はモーツァルト。要はみんなでモーツァルトの作品を弾きましょうということなのだ。それだけでもなかなか珍しい演奏会だが、今回はもう一つ、とても趣向を凝らした特色がある。和歌山の20人の「若い芽」たちが、演奏する作品を作曲した時のモーツァルトとほぼ同じ年齢なのである。例えば演奏会のトップバッターの5歳の子は「メヌエット」を弾くが、これはモーツァルトが5歳の時に作曲したもの。お次は8歳のモーツァルトが作曲した作品を8歳の子が弾く……このように年齢順でチクルスを進めていく形の演奏会は、恐らく日本でも初めてではないだろうか。

聴いて頂くと分かるが、5歳のモーツァルトが人生で初めて作曲したメヌエットは、時間的には短く音の数こそ少ないが、もうすでに「完成」されていて、無駄な音も、足りない音も一つも無い完璧な作品となっている。そして年齢を重ねるごとに、曲は長くなり、音の数も増えていき、一見複雑になっていくようにも思えるが、やはり無駄な音など1つもない端正な姿のままで、ただ年々成熟されていく音楽の深さは不思議と感じ取れるという、天才ならではの姿を垣間見ることが出来る。

他ではなかなか経験出来ない魅力がぎっしり詰まった今年の『若い芽チクルス』コンサート。5歳から大人までのモーツァルトの姿、そして和歌山の5歳の小さなピアニストから大人までの姿を重ね合わせてお聴きいただきたい。このコンサートは、10月16日(日)14時から、和歌山城ホール小ホールにて。入場無料。当日13時より受付開始。

千田和美:ピア二スト
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業。インディアナ大学音楽学部大学院パフォーマー・ディプロマコース修了。全日本ピアノ指導者協会正会員。きのくに音楽祭実行委員は今年で3期目