とらふすクラシック・261
池原衣美(vn) 千田和美(p) Duo Concert Vol.3
ピアニスト 千田和美
すっかりマスクをして外出するのが当たり前になってきた。うっかり忘れて家を出るとなんだか妙に恥ずかしい感覚が湧いてきたりして、慌てて取りに帰ったりするほどである。当然演奏会でも客席の皆様は全員マスク姿。下手をすると舞台の上で演奏している演奏者の顔にもマスクがあったりする。いつになったら以前のようにリラックスしながらゆっくりとした気持ちで聴いていただけるのか…と演奏家として日々切なくなる。
昨年は演奏会自体も出来る状況ではなく、私たちのデュオリサイタルの開催も泣く泣く諦めた。今年は2年ぶりのリサイタル。プログラムはスークとドボルザークとシューマンという三人の作曲家を取り上げた。一般的に耳馴染みのある作曲家はシューマンくらいか。スークという名前はもしかしたら知らない人も多いのではないだろうか。ところがこの三人、実は絶妙に関わりあっている。スークとドボルザークはなんと親戚であり、ヴァイオ
リニストのスーク(作曲家のスークと同性同名)を挟んで「祖父」と「曾孫」の関係という、世代を超えてのかなり近い親戚なのである。おそらく、作曲家スークの娘がドボルザークと結婚したのではないかと思われる。
またドボルザークとシューマンの関係についてだが、まずドボルザークはブラームスとかなり親しい間柄であり、その親密さはまるで兄弟のようだと言われていた。一方でブラームスとシューマンは家族のように近しい関係だったことは周知されているが、そのことからも当然ドボルザークはシューマンとも交流があり、作曲家としても大きな影響を受けたと言われている。
さて、近しい親戚であったスークとドボルザーク。そして親交があり、作風を見てもかなり影響を受けあっていたドボルザークとシューマン。この3人の作曲家の作風がどれほど似ているのか、そして違うのか…。その観点で聴いてもらえると、とても面白い発見があるのではないかと思っている。
千田和美 プロフィール
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業。インディアナ大学音楽学部大学院パフォーマー・ディプロマコース修了。全日本ピアノ指導者協会正会員。きのくに音楽祭実行委員。