縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

過ぎ去っていく時間の美しさを噛み締めて・・

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・105。
  過ぎ去っていく時間の美しさを噛み締めて・・
              ピアニスト 中谷政文
新緑の深まる5月、和歌山市野崎の緑風舎にて、ピアノリサイタルを開催いたします。美しい日本庭園に囲まれたこの音楽ホールは、今まで数多の著名なアーティストが演奏された特別な場所であり、そのような空間でピアノを奏でられる喜びをしみじみと感じています。長年にわたる留学生活を終えた今、人生の再スタートを故郷和歌山の地で切ることが出来、私にとって記念すべき演奏会となるこの日を今から待ち遠しく思います。

ピアノ演奏は、一瞬の出来事の連続が織りなす一期一会の儚いものです。その先にどんなドラマが起こるのかという期待、そして思いもよらぬ世界に誘われ、作曲家が与えてくれる啓示のような瞬間など、予定調和のようなことが決してないところに生演奏の醍醐味があります。実際、演奏に対して責任のある私でも、会場のお客様の雰囲気、そしてホールに響くピアノの音色から感化され、作品を普段とは全く違ったように捉えられる時もあります。そのような、過ぎ去っていく時間の美しさを噛み締められるような演奏会にしたいと思います。

本公演では、音楽と物語が一体となった作品が数多く演奏されます。ラフマニノフピアノソナタ第1番は、ゲーテの戯曲「ファウスト」を基に作曲され、人生に行き詰まり苦悩するファウスト博士が、悪魔メフィストフェレスの力を借り、俗世の体験を通して生きる喜びを再び取り戻す壮大なドラマが背景にあります。またストラヴィンスキーの「火の鳥」では、魔法を使う火の鳥を味方につけたイワン王子が、魔王カスチュイと決闘し、勝利でカタルシスに浸る歓喜のシーンが描かれています。これらの作品と対峙することは、まるで舞台をもたないオペラを観ているかのようです。

5月12日(日)15時より開演となります。お問い合わせは緑風舎(073-494-8466、受付時間 月・水~金、祝日を除く10:00~15:00)まで。皆様のご来場をお待ちしております。

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和歌山市出身。全日本学生音楽コンクール全国大会小学生の部第1位。東京藝術大学卒業。その後渡米、マイアミ大学で博士号取得し卒業。第8回ソフィア国際ピアノコンクール "アルベール・ルーセル" 第1位ならびにY. Boukoff賞受賞。平成30年度和歌山市文化奨励賞受賞。