本日付け。とらふすクラシック・21。
音が織り成す響きの世界と歴史
ピアニスト 上野絵理子
幼い頃、とんでもない衝撃を受けたクラシックのコンサートがありました。それは、あるロシア人ピアニストによるピアノリサイタルでした。音が鳴り始め、たくさんの響きがホールに満たされていく中、その響きを通して、光、色、温度感など、そこにあるはずのないイメージが、目の前に溢れていたのです。正確には頭の中にでしょうが・・・。最後の音が消えた時、子供だった私は、とても素敵な絵本を読み終えた感覚だったのを記憶しています。暗い客席、そして舞台のみに照らされる照明。奏者はマイクを通さず生の音を客席に届けます。一見、地味で退屈そうな光景ですが、これもクラシック音楽の面白さを引き立てる要因のひとつなのです。
クラシックの大作曲家たちは、それぞれの時代において、強いメッセージを作品に残してきました。神を賛美するものに始まり、個々の私的な感情、対政治的なもの、情景の描写。それらは、コンサートで演奏されることにより、現実的な音となり、その響きの中で、さらに昇華された芸術作品となります。コンサートは、響きを通して、歴史が甦る瞬間でもあります。そんな魅力たっぷりのクラシック音楽を是非一人でも多くの方に聴いて頂きたいと日々思っています。
10月1日のソロリサイタルでは、モーツァルト「ロンドニ短調」、シューマン「子供の情景」、ラヴェル「夜のガスパール」、ブラームス「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」と四人の作曲家の作品を取り上げます。偶然にも、この日は、シューマンとブラームスが、初めて出会ったと日と言われています。164年前のことです。そういう時の流れを、ピアノの響きの中で、皆様と共に感じられますように。
【コンサート】10月1日(日)19時から、和歌山県立図書館メディア・アート・ホール(和歌山市西高松一丁目7番38号)にて。チケットは2000円。お問い合わせは上野(073-445-5028)まで
プロフィール 上野絵理子 ピアニスト。和歌山市生まれ。京都市立芸術大学卒業。同大学院修了。フランス留学、パリ・スコラカントルム音楽院高等課程を最優秀で卒業。2016年帰国、関西を拠点に室内楽や伴奏、ソリストとして活動。
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