縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

杉谷昭子賞受賞記念リサイタルに寄せて

とらふすクラシック・353。
杉谷昭子賞受賞記念リサイタルに寄せて
            ピアニスト 天羽博和

2024年2月、リサイタルをしたいな、あんな曲、こんな曲を弾きたいな、などと妄想に耽っておりました。そんなある日、若手演奏家支援企画なるものが目に留まります。和歌山市出身で国際的にも活躍された恩師杉谷昭子先生の東京のサロンで、それも先生ご愛用のピアノでオーディション~合格したらリサイタルとあります!!おお、締め切りまであと数日やないですか!!!決して若手ではないけれども、この五十路にして身につけたことがどれくらい認められるものなのか、試してみるか。そんなノリで受けたら思わぬことに杉谷昭子賞を受賞、5月26日(日)午後6時30分から、東京・錦糸町すみだトリフォニーホールでリサイタルが開催出来るとのメール。うそやろ??と本人が一番びっくりしております。青天の霹靂とはまさにこのこと!!

昨年末には実父が87歳で他界し、喪失感に苛まれておりましたが、ここに来てやっと一歩前進できたかのように、また父からも「もっとしっかりせーよ」と叱咤されたかのように感じています。

今回のプログラムは楽聖たちの晩年の作品を集めたもので、「白鳥の歌」、つまり彼らが人生の終焉に向けてどのように生きたかがテーマです。お世話になった杉谷昭子先生への思いを込め、そして実父の遺した日記を読み返しながら、過去の自分を振り返り、人生の折り返しを過ぎた今、この先どのように生きていくべきなのか考えながら演奏できたら、と思っています。 ブラームス「6つのピアノ小品作品118」第6番の左手のアルペジオは、書かれた前年に経験した押し寄せる洪水、そして右手の交錯する旋律は助けを求める人々の声のように聴こえます。初めて演奏したのは阪神淡路大震災直後の神戸で、その衝撃的な光景とこの曲の背景が重なり、恐ろしさのあまり30年近くもの間、ステージでは弾けませんでした。今回の演奏が、戦争で苦しんでいたり、去る能登半島の災害で被害に遭われたりした方々の心に届きますように。

プロフィール
大阪府生まれ。和歌山在住。相愛大学音楽学部卒業。京都フランス音楽アカデミー、フランス・クールシュヴェール等でも研鑽を積む。2018年、日本人7人目となるドビュッシーピアノ独奏作品全曲演奏を完結。20年、第2回日本室内楽ピアノコンクールに入賞。23年、岡原慎也指揮テレマン室内オーケストラとベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を共演