縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

澤クヮルテット デビュー30周年記念演奏会

とらふすクラシック・212
澤クヮルテット デビュー30周年記念演奏会
         ヴァイオリニスト 澤 和樹
澤クヮルテットはお陰様で1991年3月のデビューコンサート以来、30周年を迎えることが出来ました。これまで一人のメンバー交代もなく続けられたことは、私たちの誇りとするところです。

デビューの年の夏、ロンドンで行われた20世紀最高の弦楽四重奏団の一つ、アマデウス弦楽四重奏団のメンバーによる若いクヮルテットのための講習会「アマデウス・コース」を受講しました。アマデウスのリーダー、ノーバート・ブレイニン氏に「40年間、同じメンバーで続けられた秘訣は?」と尋ねた時に帰って来た言葉は「ベートーヴェン、特に後期のクヮルテットを極めたいというメンバー共通の思いだ。」というものでした。

当時、結成後間もなく、まだベートーヴェンのレパートリーは中期の「セリオーソ」一曲だった私たちには、よく理解できませんでしたが、2000年の結成10周年記念の全曲チクルス、その後も折に触れて演奏を重ねるにつれて、ベートーヴェンの偉大な作品の前には、メンバー同士の小さな衝突すら演奏のスパイスとしてプラス思考になってしまいます。

昨年の生誕250年に合わせて企画した結成30周年記念がコロナ禍で1年遅れとなりましたが、「ベートーヴェンに記念の年は必要ない。彼は常に私たちとともにある。」と名ピアニスト、アンドラーシュ・シフが述べたように、コロナ禍の時代にこそ、音楽家として聴力を失うという絶望的な試練を乗り越え、打ち勝ったベートーヴェンの孤高の境地が私たちを慰め、勇気づけてくれます。

この春、反射板の改修で、飛躍的に音響が改善されたという県立図書館のメディア・アートホールでのクヮルテットとしての初めての演奏も楽しみです。10年後、私たち4人の平均年齢が「後期高齢者」となりますが、目指すはアマデウスの40年。ベートーヴェンへの挑戦は、人生100年時代の私たちの拠りどころです。是非、ベートーヴェンの音楽の力を浴びにいらしてください。残席が少なくなっておりますので、お問い合わせのうえお出かけください。和歌山県立図書館文化情報センター 073-436-9530

プロフィール 澤 和樹
1955年和歌山市生まれ。東京藝術大学卒業、同大修士課程修了。安宅賞受賞。ロンドン留学を経て帰国、各地で演奏活動を重ね、県文化賞受賞。東京藝術大学学長。和歌山県立図書館音楽監督