わかやま新報
とらふすクラシック・377
朗読カフェの再開
朗読家 福山ひでみ
今年三月、三年ぶりとなる、福山ひでみの「朗読カフェ@LURU HALL」を再開させていただいた。「朗読カフェ」が休止の間もラジオの朗読番組はさせていただいていたし、朗読教室が再開してからは、ほぼ毎日のように、練習作品を読んでいた。でもやはり、どこか物足りない、どこか寂しい。私は聴き手がいて初めて朗読だと思う。読み手が聞き手の中に作品世界を描けてこその朗読だと信じている。だから、一つ所に読み手と聞き手が居て一緒に世界観を共有することのできる朗読会は最高に楽しく、心躍る時間だ。
さて、その私の大好きな場所に、三年の時を経ても、お客様は帰ってきてくださるだろうか。あの頃、毎回、一番後ろの席で目を閉じて聞いてくださったご婦人や、ご自身も読み聞かせや朗読をしているとおっしゃっていたグループの皆さんは・・・・。終了後に聞かせてくれる感想や、作品への想いはとても励みになり勉強になった。またお会いできると嬉しいのにと、半ばドキドキしながらの再開になった。
そして初回こそ、休止前の半分に満たない参加とはなったものの、回を追うごとに新しいお客様が増え始めた。そしてそれは嬉しい想定外となった。男性が増えた、女性もお一人が増えた、ご夫妻で来てくださる方、デートに選んで下さる若いお二人、「読まないけど聞くのは大好き」な明るいご婦人グループ、そこに常連様のグループ、本当に様変わりした客席に、ひとりニヤニヤしてしまう。
誰もが知っている文豪の作品は朗読で聞くとまた違った感動がある。作家名はあまり知られてはいないけれど、声に立てると映像が浮かびドラマのような作品、文字に息を吹き込むと生き生きとする美しい詩。毎回、何を聞いて頂こうかワクワクする。今年最後となる福山ひでみの「朗読カフェ@LURU HALL」は十一月十六日(土)午後一時開場、午後一時半開演、ワンドリンク付き、1500円。嬉しいことに来年の奇数月の開催も決まった。ワクワクは続く。
福山ひでみ
和歌山市生まれ。大阪芸術大学放送学科卒業後、テレビ、ラジオでの活動を重ねながら、ナレーションオフィスを開設。県内各地で朗読教室や発表会を開き、言葉の大切さを伝える。朗読グループ「イーマ」主宰。株式会社inntoro代表。