縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

通崎睦美コンサート 木琴デイズ in Wakayama

わかやま新報 
とらふすクラシック・376
通崎睦美コンサート 木琴デイズ in Wakayama
木琴奏者 通崎睦美
よく「木琴とマリンバはどう違うの」と尋ねられる。「共鳴管(パイプ)の有無」、あるいは「木琴の上等なものがマリンバ」などと言われるが、これは正確な説明ではない。日本では、木の鍵盤が並んだ楽器の総称を「木琴」と呼ぶので、コンサート用のマリンバからおもちゃのモッキンまでが「木琴」と呼ばれる。確かに、間違いではない。しかし、これが話をややこしくするのだろう。

私が演奏しているのは、クラシック音楽で使われる狭義での「木琴(シロフォン)」だ。ちなみに、ヴィブラフォンやグロッケン・シュピールの鍵盤は金属なので「鉄琴」のグループに入る。木琴はルネサンスの時代からヨーロッパで演奏されていた。ドイツには、束ねた藁のレールの上に木片を並べたコツコツと可愛らしい音色のする木琴「ストロー・フィーデル」という楽器がある。これをヨーロッパの移民がアメリカに持ち込んだ。後に鍵盤打楽器製造のトップメーカーとなるディーガン社(シカゴ)の創始者、J.C.ディーガン氏(1853-1934)は、この楽器に着目。手前(低音)から奥(高音)へと並んでいた鍵盤をピアノと同じ左(低音)から右(高音)へと並び替え、調律をほどこし共鳴管を付けて、販売を始めた。1900年初頭のことだ。

オーケストラやブラスバンドで使われる現代の木琴は、総じて鍵盤の幅が狭く甲高い音がするが、私が往年の名木琴奏者・平岡養一氏の遺族から譲り受けて使っている「ディーガン・アーティスト・スペシャル・ザイロフォン」(1935年アメリカ製)は、鍵盤が広い上に、今では入手することができない上質のローズウッドを使用しているので、特別に味わい深い音色を持っている。

11月17日、和歌山県立図書館、メディア・アート・ホールで開催する「通崎睦美コンサート 木琴デイズinWakayama」では、そんな蘊蓄もお話ししながら、木琴の音色をお届けする。ここでしか聴くことができない、特別な木琴の響きを、是非お聴きください。

通崎睦美
1967年京都市生まれ、京都市立芸術大学大学院音楽研究科を首席で修了。世界で唯一のクラシック音楽の木琴奏者。演奏や執筆活動を通じて木琴の復権に注力。アンティーク着物のコレクター。11月2日から県立図書館にて、木琴デイズ特別企画展開催。