縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

母なる海 そして波間を吹き抜ける風のように

とらふすクラシック・297
〜母なる海 そして波間を吹き抜ける風のように〜
          フルーティスト 岡本万貴

6年ほど前に、ギタリスト金谷幸三氏から武満徹のアルトフルートとギターのための「海へ」をやってみない?と声を掛けられたのがデュオ結成の始まりでした。学生の頃から好きだった曲を演奏できる日が来るなんて!すぐに楽器店でアルトフルートを手に取る自分がいました。

1980年に書かれた「海へ」、軸となるリズムは感覚的に「秒」指定され、邦楽的な間合いや息の長いメロディは、まるで絵巻物に描かれるモノクロームの世界。宇宙の漆黒にも似た夜の静けさ、鯨がゆうゆうと泳ぐ生命ある母なる海、そして陸から眺め懐かしむ波の記憶。ギターの響きはメタファとして海そのものを表現、対してフルートは波間を吹き抜ける風のように歌う。そんな豊かに変化する大自然の表情を見事に表現したこの曲は、武満徹の中でも傑作の一つと言われています。

「ただただ美しい。」これまでに幾度となく演奏してきたこの作品には、身近に海がある和歌山で生まれ育った私にとって特別なものを感じています。「海へ」を聴いて、やはり何かを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そして今回初めて演奏するのがエディソン・デニソフの「ソナタ」です。かつて巨匠オーレル・ニコレ氏が来日された際に演奏されたそうですが、日本では聴けることの珍しいレアな曲です。この曲も「海へ」同様、聴く人の想像力を掻き立てられる音楽です。言うならギターによって広げられた響きのキャンバスにフルートが無機質に、かと思えば色彩豊かに描きなぐってゆく。絵画を見る感覚で楽しんでいただけること間違いなしです!

他にもアルゼンチンタンゴ の革命児、アストル・ピアソラ の「タンゴの歴史」や、ギターソロでもバッハのシャコンヌなど大作を用意。ありきたりでは無く印象的で、初めて聴く方の心にもストレートに届きまた聴きたくなるような、そんなとっておきのブログラムです。 和歌山の豊かな自然を感じる和歌山城ホールで、私たちならではのフルートとギターの世界へとご案内いたします!

岡本万貴プロフィール
相愛大学音楽学部フルート専攻卒業。クラシックギターと「黒江万金堂」を結成、2020年4月よりオンラインコンサートを毎月行い、全国に向けて発信。バロック、近現代音楽を中心に心に響く癒しの音を追求している。