本日付け。とらふすクラシック・24。
先人たちが見た景色に思いを馳せて
ピアニスト 瀧本裕子
ドイツ人にとって森や自然は神聖なる場所であり、森や泉には精霊が宿ると信じられています。都会には公園が多く郊外には奥深い森があり、人々はよく森を散歩し、長い休暇には自然を求めて出かけます。ベートーヴェンもブラームスも散歩が好きだったと本で読んだことがあります。青い空、木々の緑、澄み切った湖をぼんやり眺め、小鳥のさえずりなどに耳を傾けているうちにどこからともなく自然に音楽が聞こえ、彼らの頭の中に数々の名曲の曲想が湧いてきたのだろうと思うと、彼らの痕跡をたどりたい、私も彼らと同じ何かを感じたいと心が躍りました。幸いにもドイツでお世話になった師匠の推薦により、私はいろいろな地でのサロンコンサートに出演させていただきました。その地に向かうため列車に揺られ、窓から眺めた田舎の景色は、私をタイムスリップさせてくれました。私の頭の中に彼らの名曲が流れ彼らが見たかもしれない大地や風の匂いにじかに触れ、彼らはこうした自然を愛し、そのエネルギーを音楽に託したのだと感じ取れた時、この土地でピアノを弾ける幸福感に浸ったものでした。うまく弾くことだけにとらわれず、彼らが曲に込めた思いを理解しようと曲に寄り添い、想像し、どう感じて、どう表現するかを突き詰めて演奏することが大切なのだと、ドイツの大自然が教えてくれました。
今回のデュオコンサートではニュルンベルク音大で共に学んだヴァイオリニストの阿佐聖姫子さんと一緒に、前半はドヴォルザーク、クララ・シューマン、ブラームスを、そして後半はサンサーンス、ファリャ、ピアソラなど様々な国の作曲家の作品を取り上げます。彼らが作品に込めた気持ちや伝えたい想いは、それぞれ違います。彼らが見てきた景色も違うでしょう。そのような作曲家の想いが皆様の心に届きますよう一生懸命演奏させていただきます。ドイツではオクトーバーフェストの季節です。皆様と楽しいひと時を共有できますように、「プロースト!」
プロフィール 瀧本裕子 ピアニスト。和歌山市出身。桐朋学園大学ピアノ科卒業後、ドイツ留学。2016年9月ニュルンベルク音楽大学修士課程修了。現在は関西を中心にピアノ講師として指導を行うとともに、ソロ、室内楽など幅広く活動中。
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