熊野・古座川。月曜日の朝。
5:00を携帯の画面で確認してから
そっと寝床から抜け出し パソコンをリュックから持ち出した。
薄くらいなか階下のロビーに向かう。
応接間と古い字体で描かれた部屋に気が付いた。
アンテックな応接セットが開かれた扉からみえる。
照明のスイッチを捜すがなかなか見つからない
露出の電線をたどるとひも式の懐かしいスイッチに当たる。
引っ張ると明かりがついて そこに現われたのは・・・
タンノイの大型スピーカーと真空管のアンプリファィヤー
何本も重ねた英国製のスペア用の真空管の紙箱がすべてを語る。
世界の銘機と手創りで熟成されたオーディオセットと一目でわかる。
申し訳程度にアンプ台の上にTVモニターが載る。
ニュースが映るかなとリモコンを操作するもやはりご法度のようだ。
オーディオはオーナー以外は手を触れてはいけない。
しばらくすると親爺がガラス越しに歩くのが見えた。
まもなく親爺のお母さんと思われるようなご年配のご婦人が
どうぞと冷たいコーラをグラスに入れお盆で運んでくれた。
飲んだ翌朝にはありがたい。親爺も酒飲みなんだろうか・・・
その盆には産経新聞の朝刊も添えられていた。
やはり司馬遼さんなんだ・・・。
6時過ぎには風呂上りの親爺がやってきた。
乱雑に積まれた机の上のCDのなかから
この朝の時間にピッタリのクラシックを鳴らしてくれた。
久方ぶりの真空管の音というよりも
良く熟成されたオーディオの音でたちまち至福の気分になった。
十代目という老舗旅館・神保館の当主の親爺・神保さんは
写真HP:http://www.za.ztv.ne.jp/jimbo/index.htm
温かい音楽の漂う中いろんなことを話してくれた。
その言葉の温かさと真空管の音色が調和して
ここ何年も経験できなかった
懐かしくも力湧き出るような感覚を感じさせてくれた。
古座川を少し上った三尾川という集落に
朝飯に向かう時間になり中座して応接室を離れた。