わかやま新報
とらふすクラシック・422
響き合う「和」と「洋」
──和歌山で紡がれる西洋と日本の音楽
ヴァイオリン 澤 和樹
10月25日(土)、和歌山城ホールで開催する「響きあう和と洋 紀尾井 午後の音楽会」に出演します。この公演は今年30周年を迎えた日本製鉄紀尾井ホール(東京都千代田区)が企画するもので、日本の伝統音楽とクラシック音楽の演奏家がジャンルを超え、趣向を凝らしたコラボレーションを披露します。三絃の菊央雄司、箏の菊重絃生、そして文楽界から竹本小住太夫と鶴澤寛太郎が出演します。
地歌、箏、義太夫節それぞれの魅力あふれる演奏に続き、私はピアニストの蓼沼恵美子とともに、文豪幸田露伴の妹、幸田延が日本人として初めて作曲したヴァイオリン・ソナタや、夭逝の天才・貴志康一の「竹取物語」を演奏します。プログラムすべてが古今の日本人作曲家によるもので、まさに「オール・ジャパン・プログラム」です。
箏の菊重絃生さんと私のヴァイオリンで共演する宮城道雄の「春の海」では、東京藝術大学映像研究科教授でアカデミー賞ノミネート作家でもある山村浩二さんによる手描きアニメーションを、最新AI技術で生演奏とシンクロさせる“映像コラボ”が世界初演です。そして、義太夫三味線の鶴澤寛太郎さんとは、日本を代表する作曲家、野平一郎さんがこの公演のために作曲された「もつれ/くくり~太棹三味線とヴァイオリンのための」を演奏します。同じ弦楽器でありながら、義太夫三味線の打楽器的なキレの良さと、ヴァイオリンのしなやかな持続音のコントラスト、また奇遇にも文楽が江戸中期(18世紀初頭)に大阪を中心に発祥した頃とイタリアでヴァイオリン音楽が隆盛を極めた時期の一致、浄瑠璃三味線方が、鶴澤、竹澤、豊澤、野澤…と必ず澤が付くという不思議なご縁を感じています。
見どころ聞きどころ満載の演奏会です。音楽の「和」と「洋」が響き合う瞬間を、ぜひ会場で体感してください。10月25日(土)午後2時開演 和歌山城ホール小ホール「紀尾井 午後の音楽会」ご予約は和歌山城ホールtel:073-432-1212 公演に関するお問合せは日本製鉄文化財団tel:03-5276-4500
プロフィール 澤 和樹
1955年和歌山市生まれ。東京藝術大学卒業、同大修士課程修了。安宅賞受賞。ロンドン留学を経て帰国、
各地で演奏活動を重ね、県文化賞受賞。前•東京藝術大学長。和歌山県立図書館音楽監督。
- -