わかやま新報
とらふすクラシック・379
光陰矢の如し
クラシックピアニストの覚悟
ピアニスト 木谷悦也
和歌山市本町2丁目のフォルテワジマ4F、フォルテピアノ広場で演奏をするようになって早や10年が経ちます。長男が生まれてからの10年は、それこそあっという間に経ってしまいました。今でも鮮明に憶えていますが、50歳の時にルルホールでのコンサートで、初めて自分自身満足のできる演奏が出来ました。50歳にしてやっと、自分の職業をピアニストです、と自信を持って答えられるようになったと思いました。
しかしそれからの10年間というもの、ピアノバーを経営しながらの演奏活動は多忙になり、作曲や指揮の仕事も増え、2年前に和歌山で行われた国民文化祭には、前夜祭を含め3つのコンサートに出演、直前の半年間は寝るのは二日に1度という生活になっていました。ピアノの練習に割ける時間は少なくなり、自分自身名納得のできる演奏ができなくなっていきました。それに加え息子の紳之介が昨年の初めに新聞に取り上げられて以来、演奏の機会に恵まれて、今や私の演奏回数より多い出演をこなすようになってきました。明日放送のBSテレビ東京の番組「武田鉄矢の昭和は輝いていた」(11月15日曜日午後8時放送予定)にも呼んで頂きました。私か妻の宝子が伴奏についていくのですが、家族での出演依頼も増えてきて、今年は大変忙しい年になりました。
私は来年還暦を迎えます。子どもの頃サザエさんのお父さん、磯野波平さんを見て、54歳になったらあんなおじいちゃんになるんやと思っていましたが…このまま今の状態で60代を迎えたら同じことの繰り返しです。そこで今年の暮れに、12年間やってきた「ぴあのバーあんてぃーく」を閉店することにしました。たくさんの方と出会う機会をくれて私にとっては人間的に成長する場として大変大きな存在でした。辞めるのは本当に名残惜しいですが次のステージに行かないと進歩はありません。
11月30日のピアノ広場では、来年から私のプログラムの中心になっていくであろうベートーベンとショパンの作品を中心に演奏します。
木谷悦也
和歌山市生まれ、大阪音楽大学器楽科ピアノ専攻卒業。ミュンヘン音楽大学等で学び、10年にわたり欧州で活動。現在ピアニスト・指揮者としての音楽活動の他、独、仏、伊等の語学講師。きたにエンターテインメント代表。