縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

和楽器の音色を楽しむ~箏と尺八の二重奏             

本日付け、わかやま新報、とらふすクラシック・114。
 和楽器の音色を楽しむ~箏と尺八の二重奏
               小松 亜未
「この楽器、かたちが歪んでいるんです」お世話になっている楽器屋の方にこんな相談をしたことがありました。買ったばかりの楽器がわずかに捻れており、気になっていたのです。心配する私に対し、楽器屋の方の返事は「そりゃ楽器は木をくり抜いて作っているんだから。生きている素材なんです。歪みがあるのも自然なことですよ」。たしかに、と納得できたと同時に、考えさせられるものがありました。思えば私たちの身の周りは、規格化された「もの」に満ちています。家具、食器、洋服…。現代のものづくりでは、色やかたちの均整さが、品質の絶対条件であり、少しでも基準から外れようものなら、不良品として排除されます。大量生産が当たり前となった世の中では、「もの」の個性に向き合う機会がほとんどないのかもしれません。

和楽器は、職人によってひとつひとつ手作りされます。原料の材質、作り手によって全く音は異なりますが、どれが正解というわけではありません。華やかに響く楽器もあれば、深く澄み渡る音色を持つ楽器もあります。箏にいたっては、経年によって音が変化するのも特徴です。新しい楽器は水を多く含みますが、時間とともに水分が抜け、やがては朽ちていきます。箏の寿命は数十年単位と言われています。若い楽器の瑞々しい音も、朽ちゆく過程の暖かい音色も、それぞれ異なった美しさがあるのです。大切なのは、演奏する者が楽器の個性を理解し、活かすことです。様々な楽器があるからこそ、表現できる音楽の幅は拡がるのです。多様性は強みです。演奏者として、常に楽器に寄り添い、音楽の可能性を追求していきたいと思います。

LURU CLASSIC 和CAFEの第五弾『炎陽』は、箏と尺八の二重奏を中心としたコンサートです。尺八奏者の大萩さんは、尺八職人としても活躍されており、愛媛の工房で楽器の製作もおこなわれています。当日はトークも交えながら、和楽器の音色を楽しんでいただければと思います。

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小松 亜未 プロフィール
和歌山市出身。桐蔭高校箏曲部にて箏をはじめる。第21回賢順記念くるめ全国箏曲コンクール第3位、第21回くまもと全国邦楽コンクール奨励賞受賞。西陽子氏に師事。