縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

偉人ゆかりの地へ、作品と共に

今日付け、わかやま新報”とらふすクラシック・57”
   偉人ゆかりの地へ、作品と共に
      ピアニスト、音楽学者 谷口 愛


 モーツァルト交響曲にはいくつか地名のついた作品があります。パリやプラハオーストリア第3の都市リンツ、そしてなぜか村名の付いた曲があります。その曲は交響曲K.45a旧ランバッハ。名付け親は天才物理学者の遠戚、アルフレート・アインシュタインです。
 ザルツブルクリンツの間に位置する人口3400人のランバッハ村には、1046年創立の大きな修道院があります。この修道院には教会、1080年頃のフレスコ画オーストリアに現存する最古の劇場、図書館等があり、過去にはVIP用の宿泊施設もありました。また交通の要衝にあることから、多くの歴史上の人物達がこのランバッハ修道院に立ち寄りました。例えばマリーアントワネットは14歳の時にフランスへ嫁ぐ際に、ナポレオンはウィーンに攻め入る道中に宿泊しました。ナポレオンは滞在中に銃で命を狙われたが、神父さんが阻止し事なきを得たという逸話が残っています。後年、附設の少年合唱団にヒトラーがいました。トラウン川沿いの村の入り口に聳え建つこの修道院では、今も村民の人生の節目のミサが行なわれています。私もこの修道院のミサに参列する機会に恵まれ、伝統を重んじる村民の生活に触れることができました。
 ザルツブルク出身のモーツァルトは幼い頃からこの修道院に宿泊し、オルガンを演奏していました。そうした経緯からモーツァルトが13歳の時、ランバッハ修道院交響曲K.45aを献呈しました。この曲は1923年に同図書館で発見され、25年にこの村のオーケストラによって初演され、今も尚ランバッハ村で愛され続けています。
 和歌山にも地名のついた作品があるのをご存知でしょうか。それは坪内逍遥の舞踏戯曲「和歌の浦」です。1921年(大正10年)に大阪中座で初演され、歌舞伎座でも上演されました。和製オペラに西洋音楽とバレエが加わったこの舞踏戯曲を、作品の舞台となった和歌浦で鑑賞したいものです。
谷口 愛 ピアニスト、音楽学者。和歌山市生まれ、ウィーン在住。東京音楽大学、ウィーン市立音楽院ピアノ科を卒業。ウィーン大学大学院音楽学専修。

 

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